自宅の売却で発生した約1,000万円の税金が免除された事例
2012年11月15日[更新:2019年9月30日]会社の業績が悪化し、会社の借入金の返済を社長個人が肩代わりする(保証債務を履行する)場合があります。
個人の資産を譲渡した場合は通常売却益に所得税が課されますが、保証債務を履行するために資産を売却した場合は、一定額については税金が課されないという特例があります。
保証債務の特例とは
保証人となった社長個人が経営の苦しくなった会社の借入金を代わりに弁済した場合、会社に対する債権者は銀行から社長個人に移ることになります。
しかし、もともと銀行への返済が不可能な状態であったわけですから、会社が社長にそのお金を返済することも不可能となるケースがほとんどです。
本事例では、社長個人が私財の売却で得たお金を会社の借入金の返済に使いました。当然ながら、会社から社長にそのお金が戻されることはありませんでした。
このような場合、私財の売却益に対して課される税金を支払う能力は社長個人にはありませんので、その戻らない金額については税金を課さないという特例があります。
課される税金は1,000万円
社長のご自宅の売却額は約1億円でした。その8割以上を今まで支払いが滞っていた債務の返済に充てました。会社の運転資金も必要でしたので、ご自宅の売却で得たお金は社長個人の手元にはほとんど残らない状態でした。
当初、不動産会社の試算で約1,000万円の税金が発生すると言われたということでした。せっかく自宅が売れて会社の債務を返済できたのに、今度は多額の税金が発生してしまうということで、非常に不安な面持ちでご相談にいらっしゃいました。
できることをすべてやった申告書
この特例は、免除される税額が多額になりますので、適用が認められないケースも多いのが実情です。今回も約1,000万円の税金をゼロにするわけですから、当然、提出する資料もしっかりとしたものを用意しないといけません。
税金の問題が解決するまで、不安で落ち着かないとおっしゃっていた社長様ご夫婦のためにも、考えられる限りの根拠資料と説明資料を作成し、すべて申告書に添付いたしました。
その結果、完成した申告書は100ページ近くにもなり、社長様の会社の申告書よりも分厚いものとなりました。
支払わなくても良い税金もあるということ
この特例は世間一般で言われているいわゆる節税対策とは趣旨が異なります。担税力がない納税者に対して国が認めている、れっきとした救済制度があり、それを適正に利用したのです。
このような制度を知らないばかりに、本来支払わなくても良い税金を支払っている方がいらっしゃるかもしれません。
今回の申告は、場合によっては税務署ともめる可能性があることをお客様にもご説明したうえで進めましたが、結果としてその後税務署からのお尋ねは何もありませんでした。
できる限りの資料を作成し、必要なものをすべて添付して堂々と提出できたことが、税務署側の理解にもつながったのではないかと思っております。
※事例につきましては、掲載時点での法令に則った内容となっております。